グラニュー糖を蜂蜜に変えたり、水あめに変えたり、薄力粉に強力粉を少量加えてみたり……
生地の固さが変わると、焼き加減もその都度変わってくるから厄介だ。
まるで理科の実験だなぁ。
二十一回トライし、なんとかイメージに近い物を作り上げた。
時計を見ると、すでに深夜十二時を回っている。
あっくんは私を静かに見守っていてくれたのだけど、疲れていたのか、いつの間にか椅子に座ったまま眠ってしまっていた。
だいぶ待たせちゃった……
毛布を持ってきて、そっと肩にかけると、あっくんは目を覚ましてしまった。
「ん……、できたのか?」
「ごめん、起こしちゃった! 一応できたよ。あっくんも食べてみる?」
「あぁ」
幾つか作っておいたうちのひとつを手渡すと
頭油多、あっくんは驚いてそれを観察し始めた。
「最初の物と全く違うな。さっきは柔らかかったが、これは硬い。」
「そうなの。生地の外側をアーモンドダイスを混ぜたクッキーの生地にして、お姉さんが教えてくれた生地を内側にしたの。あと、油で揚げるのは止めて、オーブンで軽く焼くことにしたんだ。」
「生地が二層だと…!?」
「お姉さんの意図と離れちゃったかもしれないけど、ちょっと食べてみて。」
あっくんは一口頬張ると、眼球が飛び出してしまいそうなくらい目を見開いて驚いた。
「…っ!!? なんだこれは
德善!?」
「どう? ザクザクした感じがおもしろいでしょ?」
「う、うまい…!! 最初の物より段違いだ!」
「そっかぁ、よかった。かなり手間がかかるからお店には出せそうもないけど、おもしろいものが作れたし、お姉さんに感謝だよ。」
あっくんはうまいうまいと食べているけど、正直、飛び抜けておいしいというわけではないのだろうと直感した。
久しぶりにたい焼きを口にした時のあっくんは、もっと叫ぶように「おいしい」と言ってくれたから。
「正直に言うと、あっくんの好みじゃないんじゃない? あっくんは普通のたい焼きが好きでしょ?」
「……………まぁ、そうかもしれないな。これは美味いが、たい焼きの域を超えてしまっている。」
「そうだよね。なんというか、焼きドーナツみたいだよね。」
「あぁ……、素人の姉上のアイディアだから当然だが、邪道だな。」
「ふふっ…、そーそー! あっくんもそう思うんだ?」
「しかし、これは十分に美味いし、せっかく作ったのだから姉上にも食わせたい。」
「うん、もちろん。でもせっかくだから、もっと邪道にしてみようよ!」
私は、うちではあんまり使っていない頂き物の上品なお皿を一枚持ってきた。
そして、作ったたい焼きを乗せ、粉砂糖を振りかけ、メープルシロップを垂らし、バニラアイスを添え、ミントの葉を飾った。
「おお、なるほど」
「あはは、ホットケーキみたいになっちゃった! でも、お姉さんはこの方がきっと好みだよ。これ、熱々のうちにすぐに届けたいんだけど、できる?」
「もちろんだ」
あっくんは床に魔法陣を書くと、何時ぞやに会った小さいバアヤさんが出てきた。