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堅持して心

赤色巨星

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赤色巨星



小学生の頃、学研の図鑑「宇宙」を好んで見ていた。その中に恒星の一生につい


て説明した箇所があって、晩年の恒星の赤く膨れ上がった姿が画かれていた。未


だコンピューターグラフィックスなど無い時代で、どんなに巧みな絵であっても


、今日の図鑑の画像が現実と見まがう程にリアルであるのとは訳が違う。

だが私は、その寂しいような赤金色と、カサだけ増して内部が希薄な感じのする


、どうにも手の施しようのない危うげな星の姿を、いまだに忘れることができな


い。


太陽の寿命は約100億年で現在の年齢は45億歳前後。あと数十億年すると赤


色巨星に変化すると言われている康泰領隊。小学生の頃に見ていた図鑑でも、そんな長大


な年月の果てに太陽は膨張して水星と金星を呑み込むだろう、と説明していた。


膨張した太陽が地球に迫っている予想図を掲げて。


幼い私は、‘これはもう観念するしかない’と思った。

地球が金星のような灼熱の世界になり、悪くすると太陽に呑み込まれ、いずれそ


の太陽も死んでしまうというのに、この非力な私が死を免れるわけはない、星だ


ってそれには逆らえないのだ、と小さな頭で悟ったのである。

大袈裟だと思われるかもしれないが、その当時の私はそういう風に考えることで


、意外にアッサリと、自分という存在が“有限”であることを、受け入れたわけ


だ。


小さな頭の中でそんな“観念”をしていた頃、私は望遠鏡を夜空に向けていた。

口径5センチ程度の屈折式望遠鏡なら、安価だし持ち運びも楽なのだが、私が養


育者にめずらしく自己主張して買ってもらったのは、値の張る口径10センチの


反射式望遠鏡、しかも赤道儀付きの立派なものだった。

私は、ヤブ蚊に襲われる夏も、手足が凍る冬も、重さに唸りながら望遠鏡の筒と


脚を別けて外に運び出した。それからまず北の空を仰ぎ、カシオペア座と北斗七


星との間にある暗い北極星を見つける威尼斯旅遊。ファインダーの中心に北極星がくるよう


に調整し、後は観測ガイドなどに載っている赤経と赤緯に従えば、好きな天体に


照準を合わせることができた。

私は、プレアデス星団の清澄で華やかな靑白色の輝きがとても好きだった。理由


は、その星々が若く、星としての一生がまだ始まったばかりだから。“観念”し


つつも、やはり心引かれるのは未来のあるものに対してだった。
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